忘れられない或る夏の記憶


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昨日の夕ごはん

ポテトグラタン、ベビーホタテとキャベツのバター醤油炒め、

玉ねぎとほうれん草玉子のコンソメスープ、野菜のマリネ、麦入りご飯

いつも醤油味の煮物ばかりなのでたまには、、、ということで、

前日茶碗蒸しを作る時じゃがいもも何個か蒸しておいたのを使って、

グラタンにした

これだけでもボリュームがあってご飯には手を付けず

妻を亡くした男性からの誘い

もう15年ほど前のこと

私は私の父と同年齢の男性Kとある集会で知り合った

Kは当時80歳を超えていた

その時Kは数年前に奥様を病で亡くし、

夏の間娘夫婦の住む当地に毎年一ヶ月間ほど避暑に来る生活を送っていた

東大を飛び級して卒業したというKは、

知識も豊富で性格も穏やか、紳士然としていた

彼の境遇を知った私たちは彼がこちらで友人もなく寂しくしていると思い、

皆で散歩に誘ったりした

ある時、私の親友が山の別荘に私達を誘った

パートナーもOKということで私の夫も参加

Kも喜んで加わった

ところが、その別荘でKは私の側に来るなり私に「エデンの東」の試写会のチケットを見せて、

私を映画に誘った

周りには一緒に行った友人らもいたが、

彼はまるで高校生がデートに誘うように、

頬を赤くして緊張した口調だった

それまでKに対して異性を意識しないで話していた私も戸惑った

本当に失礼な話しだけれど、私は親子ほど年の離れた、

しかも80歳を超えた男性が人妻をデートに誘うなど考えもしなかったのである

私は彼の誘いを丁寧に断った

すると、彼はまるで子どものように、

窓際の床に横になり寝てしまった

それまで非常に理知的だった彼のそのふてくされたような態度に皆唖然とした

驚いて声をかけようとする私に、

親友が私に「放おっておくように」と合図した

そして皆、何事もなかったかのように普段通り振る舞い

彼が気持ちを取り直し皆の輪の中に入るのを待った

私の夫もことの異変に気がついたようだが、

それに対して私を責めるとかいうことはなく、

彼の話題に触れなかった

その後、私たち夫婦はKが避暑を終えて戻ることを聞いた

知り合いからKが好きだというチャイコフスキーのチケットを三枚頂いたので、

私たちは彼を誘った

彼は喜んで来てくれた

バイオリン協奏曲ニ短調作品35を聴き終え、

休憩時間に夫がトイレに立った時だった

彼が席に座り正面をむいたまま私に言った

「この曲は私と貴女との夏の思い出になりました」

別荘での彼は子どものように乱れたが、

コンサートの時にはいつもの知的で紳士な彼に戻っていた

私の夫はKの私に対する気持ちを知っていたが、

コンサートに誘うことに同意してくれた

夫はKを尊敬していたので、Kとこのまま別れるのはいけないと、

配慮したのだと思う

全く夫は大人だと思う

Kに関しては、人づてにその後高齢者施設に入居したと聞いたが、

その後の消息は知らない

Kは奥様を亡くして寂しかったのだと思う

私の父も母が亡くなった後、

女性との語らいを求めて出かけるようになった

なのでKが特別だとは思わない

それだけに、最後夫と共にお別れができて、

彼にとっても私にとっても良かったと思う

配偶者を亡くした後のことを想像する時がある

私も寂しさで夫に代わる異性を求める気持ちになるかもしれない

それは、恥ずかしいことではなく、

誰にでも起こりうることなのだと思う

Kが子どものように振る舞った時、

皆彼をそっとしておいてくれた

あの出来事は、特に皆の思いやりある態度が私の記憶に留まり、

忘れられないひと夏の経験となった


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