息子との別れ/「辛い時は泣きたいだけ泣きなさい」


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今日の夕ごはん

鳥手羽元と大根の煮物、茄子と三升漬、豆腐とモロッコいんげんの味噌汁

力が抜けてやっと作った夕ごはん・・・

息子との別れ

四泊五日の日程を終え、息子が彼の地へ帰って行った

当初は昼食に手作りピザを焼き、それを食べてから出発する予定だった

ところが、夫の仕事の予定が急に変更になり、

息子を駅まで送る時間が繰り上がり10時にうちを出発となった

となると、家族一緒の食事は朝食が最後となる

7時半から食事を摂り、八時から九時まで最後の団らん

時間は無情にも過ぎてゆく・・・

「時間よ止まれ」という歌謡曲があったけれど、

家事をしながら時計を見ては、

ため息ばかり・・・

今回息子の写真を一枚しか撮っていなかったので、

最後はリビングと家の前で家族写真を撮ることにした

そこで、家事を中断しておもむろに化粧を始めた私

疲れ果てた顔では写りたくない

化粧を終えて息子が泊まっている部屋を見た

その途端、寂しくて涙、涙

たった今施した化粧が、あっという間に落ちた

こんな姿を息子に見られたくない

洗面所にかけこむと、目と鼻の先が真っ赤になっている

どうみても泣いたことを隠せない

それでも、また化粧を塗り、

明るい声で息子に出発の時間が来たことを告げた

リビングでスマホで私と息子、夫と息子と写真を撮り、

靴を履く前に私たちが万が一二人一緒に逝った場合を考えて、

息子に重要書類の置き場所を教えた

息子は「はい、わかりました」と神妙な顔で確認

玄関前で最後の写真撮影

すると、息子は「ちょっと待って!猫の墓を見てくる」と言って、

裏庭に走った

そして猫の墓の前に佇んだ

息子が16歳の時から、結婚するまで生活を共にした猫

その猫のことを思い出してくれたのが嬉しかった

とうとう出発の時間が来た

運転席の夫は息子に見えないように私を見て泣くマネをしている

後部座席の息子は車の窓を開けて私をみたけれど、

私が泣いたことに気がついていたのか、

申し訳なさそうな顔で何も言わず手を振った

「辛い時は泣きたいだけ泣きなさい」

私は車が角を曲がるまで見送り、玄関の階段を上がった

そして、玄関に一歩入るなり、大声でしゃくりあげて泣いた

コロナ禍でなかったら、

或いはこんなに悲しみが襲ってこなかったかもしれない

この二年間、コロナ患者さんの治療をする息子の身をどんなに案じたことだろう

これから先、コロナがどのような状況になるのか、

誰にもわからない

ベッドに伏して泣いた時、

数日前に私が知り合いの女性に言った言葉が私自身の耳に聞こえた

「辛い時は泣きたいだけ泣きなさい」

知り合いの女性は、

数日後に愛娘を初めての海外留学に送り出す日が控えていた

コロナ禍前に留学することを決め、

この二年半、単身の身で懸命に働き、

娘さんの留学資金を稼いできた

娘さんには持病がある

けれども、娘さんの将来を考え応援することに決めた

しかし、出発が迫ると今まで張り詰めていた気持ちが緩み、

娘さんに会えなくなる寂しさが迫ってくる

疲れもピークに達し、うつ的気持ちに苛まれた

そんな気持ちを私に話しながら、

泣きじゃくる彼女に私は先の言葉をかけた

彼女は、しばらく泣き、それから、

鼻をすすりながら「私、泣きたかったのかもしれません」と言った

泣いている私の脳裏に、

彼女の言葉が蘇った

「私、泣きたかったのかもしれません」

涙を拭いて息子の使った部屋へ行き、寝具を見た

3年8ヶ月前一泊で来た時は、

しばらく布団を片付けないで、

息子が寝た形跡を見ては本当に来たんだと確かめた

しかし、今日は深呼吸してすべてのカバーを外し洗濯

そのまま、布団を上げて掃除機もかけ、

すっかり片付けた

「息子は生きている!死んだわけじゃない!」と言い聞かせ、

「また会える、きっと会える!」と念じた

真新しい畳を見て、

そこでいつものように夫のYシャツにアイロンかけ

昼になったが食欲はない

しょうがない、何日かは引きずるかも・・・

午後からは東京で学んだ卒業生が集まっての勉強会

勉強会がなかったら、空港まで行ったと思う

そしたら、息子を戸惑わせることになっただろう

仕事をしていて良かった・・・

息子と別れて泣く母親なんて私も嫌いだ

こんな母親にはなりたくなかった

しかし、これが私だ

この弱い自分を受け入れたいと思う

そして、ここからまた新たな一歩を踏み出したいと願う


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