深夜、緩和ケア病棟に向かう


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末期がんで緩和ケア病棟に入院

危篤状態にあった50代女性が昨夜9時前に亡くなった

すぐに、彼女と親しかった友人を通してご遺族のケアをしてほしいと依頼がきた

昨日は仕事で帰宅も遅く疲れて夕飯後、

シャワーを浴びてベッドでうつらうつらとしている時だったが、

すぐに化粧をして着替え関係者と連絡を取り、一緒に10時半に病院に到着

家族控え室に入ると亡くなった女性の母、

娘とその配偶者、そして彼女の兄がソファーに座っていた

私たちが挨拶をするや否や、お母様が話始めた

娘さんが「おばあちゃんは今アドレナリンが出ているので躁状態です」

と言った

そうだろう

自分の娘がたった今長い闘病生活の末息を引き取ったのだ

当初私たちは娘さんのケアが必要かと考えていたが、

私たちが到着後すぐに娘さんは女性の死化粧をするため病室に向かい

私たちは30分ほどお母様のお話を聞いていた

お母様は「ごめんなさい、話が止まらなくて、、、

でも、話していないと不安なんです」と言った

私たちは「どうぞ我慢せずにお話ください」と傍らに座って聞いた

11時すぎ、娘さんが私たちを病室へと導いてくれた

遺族の方がたと一緒に病室に入った

ほんの数時間前まで死の床にあった彼女は、

苦しみから解放され永遠のやすらぎを得たかのように笑みを浮かべて横たわっていた

「美しいかたですね」と私が漏らすとお母様は「生前娘に会ったことはなかったの?」と聞いた

私がうなずくと、

お母様は病の進行とともに容貌が変わり悲しかったこと

しかし、今やっと女性本来の表情に戻ったようだと話し、

安心したように椅子に座った

ほどなく葬儀会社の職員二名が病室に来てストレッチャーで遺体を搬送

深夜にもかかわらず、担当の看護師二名が玄関まで見送り、

深々と頭を下げて彼女を見送った

看護師だった彼女も元気だった時は、

こうしてご遺体を送り出していたのだろうか、、と思った

それを見届け私たちもご遺族に別れを告げ病院を後にした

今までも何人ものご遺体と対面したが、

今回の女性は私と同年代だけに、

彼女の目を閉じて横たわる姿が目に焼き付いた

彼女は二匹の犬を飼っていた

お母様は女性が子供のように可愛がっていた犬の世話を託されたので、

これから頑張らないと、、、と自分を励ましていた

娘さんはというと、感情を押さえ気丈に振る舞っていた

帰宅して時計を見ると12時を回っていた

眠るように横たわっていた彼女の横顔が目に浮かび、

なかなか寝付けなかったが疲れもあって眠りに落ちた

★   ★   ★   ★   ★

午前中、彼女の葬儀の日程が決まったと知らせがきた

私も今日から担当する授業が始まるので二ヶ月ぶりに出勤

通勤の車を運転しながらずっとJ.S.Bachのオルガン曲を聴いて気持ちを集中

学生たちはそれぞれの夏を過ごし、スタンバイしていた

これから怒濤の二学期が始まる

合間に息子の結婚式も控えている

今年もあっという間に終わるだろう

これから新しい学期が始まるというその前夜

初めて会う女性の死を前にした

今の時は永遠ではない

死は生と隣り合わせ

コインの表裏と同じ

切っても切り離せない

だからこそ今生きているこの時が輝いてくる

生きていることは恵み

私も彼女のように一度きりの人生

どんな苦しみがあろうとも、最期の一息まで精一杯生きたいと願う

彼女が愛した家族の上に神さまからの慰めが豊かにありますように

今日の聖書通読箇所
ヨハネの黙示録 6章
今年から新約聖書を最初から一日一章読んでいます


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